2018年2月18日日曜日

リン

「リンの摂取量・体内調節は寿命に関係する」
(リンを摂りすぎると短命になるかもしれない?)
とNHKで聞き,湧いた好奇心の向くままに,
他愛なくも食べ物のリン含有量を調べてみた.

もちろん,腎臓を患ってもいないのに,
低いリテラシーのままにリンだけ気にして
食を窮屈にしたり却って健康を害するなんて馬鹿々々しい.
だから,研究結果の拡大解釈や安易な対処をしないように
気をつけながら,飽くまで好奇心に応えておくだけにする.

以下,
主食 肉・魚 卵・乳・豆 野菜・果物・海藻 調味料・酒
に分けて示す.概ね次の傾向があることが見出される.

調味料・酒 < 主食 < 野菜・果物・海藻 < 卵・乳・豆 < 肉・魚
魚や乳など猫の好きな食べ物はリン多めと言えようか?
確かに猫は腎臓を患いやすいし...
ただし,大雑把な把握だけしたいだけなので,
大きさの違いや部位の有無といった区別はせぬ比較だ.
どうか細かい差には拘泥しないでほしい.
特に断らない限り,単位はmgである.


【主食】

食パン37~ < 白ごはん51 < そばの麺136
米は精米しないと高リン食
玄米や蕎麦は,1食分でも1 kcal当たりでも高リン食

・ご飯 1杯
 白米51 < 赤飯81 < 胚芽米102 < 玄米195
※この中で1 kcal当たりでも 玄米飯0.79 は高リン食

・パン 1つ
 フランス22 < バターロール29 < クロワッサン30 < 食パン37~

・麺のみ 1玉
 うどん40 < ビーフン44 < 中華麺72 < 乾スパゲティ130 < そば136
※この中で1 kcal当たりでも 茹で蕎麦0.61 は高リン食

・芋 1個
 里芋28 < じゃがいも43 < さつまいも124
※この中で1 kcal当たりでは 里芋0.95 は高リン食


【肉・魚】

牛ロース150 < 赤魚1切れ204 < 牛レバー333 < 鯖1切れ441
牛豚鶏の違いより部位の違いで差 レバーは高リン食
魚は骨含むからかリン多め 筋肉はATP多いのか赤身ほどリン多め

・国産牛 100 g当たり
 バラ85 < ロース120 < もも160 < ヒレ180

・輸入牛 100 g当たり
 バラ130 < タン140 < ロース150 < ひき170 < もも180 = ヒレ180
 < レバー333
※この中で1 kcal当たりでも レバー2.50 は高リン食

・豚 100 g当たり
 バラ140 < ひき170 < ロース180 < もも210 < ヒレ230
  < レバー340

・鶏 100 g当たり
 ひき90 < 砂肝140 < もも160 < 胸170 < ささみ220
  < レバー300

・加工肉 1枚・1本
 ローストビーフ20 < ウィンナー29 < 焼き豚39 < ベーコン46
  < ロースハム51 = ボンレスハム51 < フランクフルト85
※この中で1 kcal当たりでも ボンレスハム2.88 は高リン食

・魚 1尾
 きす背開き42 < わかさぎ70 < ししゃも72 < かます130
  < きんき143 = さより143 < あじ156 < いわし161 < めばる162
  < にじます199 < かれい240 < さんま252 < あゆ272 < いさき273
  < にしん358
※この中で1 kcal当たりでは わかさぎ4.55 は高リン食

・魚 1切れ
 あなご95 < ぶり156 < ひらめ192 < あこう204 = 銀だら204
  < むつ216 < さわら220 < あまだい228 < 新巻き鮭230
  < 白鮭240 = 真鯛240 < かじき250 = キングサーモン250
  < たちうお257 < 紅鮭260 = ます260 < 鰻蒲焼1串270 < たら276
  < 銀鮭290 < さば441 < きんめ490

・刺身 1枚
 たこ10とりがい10 < あおやぎ11 < 真鯛17 = ひらめ17
  < すずき21 < かんぱち27 = まぐろ大トロ27 < はまち30
  < まぐろ中トロ34 < まぐろ赤身41 < かつお56

・貝・甲殻類等 1尾
 しじみ1 < あさり3 < 芝海老8 < はまぐり12 < 甘海老14 < かき15
  < うに23 < さざえ29 < 大正海老42 < しゃこ43 < ムール貝45
  < ブラックタイガー55 < 車海老62 < ほたて貝柱65 < 茹ほたて75
  < あわび113 < いいだこ124 < 毛蟹273 < するめいか563

・加工魚介 1つ・大さじ1杯
 つみれ22 < しらす干し大さじ28 < ちくわ33 < 桜海老大さじ36
  < さつま揚げ46 < ちりめんじゃこ大さじ52 < いくら85
  < 鰯丸干し100 < はんぺん110 < 鯵開き干し114 < たらこ156
※この中で1 kcal当たりでは ちりめんじゃこ4.17 しらす干し4.16 桜海老3.85 鰯丸干し3.81 は高リン食


【卵・乳・豆】

卵90 < プロセスチーズ146 < 木綿豆腐165 < 牛乳195
チーズや豆腐はリン多めか

・卵・牛乳 1個・1杯
 鶏卵M90 < 牛生乳195 < 牛加工乳210

・乳製品 1個・1枚
 カマンベール56 < ヨーグルト100 < プロセスチーズ146
※この中で1 kcal当たりでは プロセスチーズ2.15 は高リン食

・豆 大さじ1杯
 グリーンピース12 < 大豆27 < ひよこ41 < 小豆42 < ささげ48

・豆製品
 油揚げ46 < おから79 < 納豆95 < 豆乳98 < 絹ごし122
  < 高野豆腐141 < がんもどき160 < 木綿165 < 厚揚げ180
※この中で1 kcal当たりでは 高野豆腐1.66 木綿豆腐1.56 は高リン食


【野菜・果物・海藻】

林檎21 < トマト42 < しめじ75 < マスクメロン126 < カリフラ204

・野菜 1株・1本・1束
 生姜4 < ピーマン8 < 春菊9 = にんにく1片9 < もやし13
  < さやえんどう10枚14 < キャベツ1枚16 = 小松菜16 = 長葱16
  = 法蓮草16 < クレソン17 = 大根輪切り17 < 切干大根1人分21
  < 茄子21 < 青梗菜23 < 白菜1枚26 < 韮29 < セロリ33
  < きゅうり36 < トマト42 < 人参43 < 玉葱59 < ゴーヤ62 < 筍96
  < レタス97 < ごぼう99 < ブロッコリー111 = 蓮根111
  < カリフラワー204 < とうもろこし225
※この中で1 kcal当たりでは クレソン3.80 小松菜3.21 青梗菜3.00 は高リン食

・きのこ 1本
 きくらげ2 < 椎茸7 < マッシュルーム9 < 松茸16 < エリンギ42
  < なめこ1袋56 < しめじ1パック75 < えのき1袋94
  < まいたけ1パック130
※この中で1 kcal当たりでは マッシュルーム9.09 まいたけ8.13 しめじ5.36 は高リン食

・海藻
 とろろ昆布大さじ2 < カットわかめ小さじ3 < 干ひじき1人分10
  < 焼き海苔1枚21

・果物 1個
 さくらんぼ1 < 巨峰1粒2 < 苺5 < みかん12
  < パイナップル(1/8)14 < デラウェア15 < すいか(1/8)19 < 林檎21
  < 柿22 < バナナ24 < キウイ27 < 和梨28 < オレンジ29 < 桃31
  < プリンスメロン43 < グレープフルーツ48 < アボカド77
  < マスクメロン126
※この中で1 kcal当たりでは 苺0.91 は高リン食

・ナッツ 1個
 マカダミア3 < 甘栗7 = 落花生7 < 胡桃17 < 胡麻大さじ39


【調味料・酒】

基本的に少ないが,原料の色濃い黒ビール&ココアは多め

・調味料等
 上白糖0 = サラダ油0 = 塩0 < 穀物酢0 < みりん0 < ソース小さじ1
  < バター大さじ2 = トマトケチャップ小さじ2 < 濃口醤油小さじ10
  = 信州味噌小さじ10

・酒 1合・1杯
 焼酎0 = ウィスキー0 = ブランデー0 = ウォッカ0 = ジン0 = ラム0
  < 梅酒1 < ワイン13 < 日本酒16 < 紹興酒19 < ビール53
  < 黒ビール117
※この中で1 kcal当たりでも 黒ビール0.72 は高リン食

・飲料 1杯
 烏龍茶2 = 麦茶2 = 煎茶2 < 紅茶3 < 玉露6 < コーヒー11
  < ピュアココア148
※この中で1 kcal当たりでは 玉露6.00 は高リン食



参考文献
  • 吉田美香,『腎臓病の人のための早わかり食品成分表』(主婦の友社・2010).

2018年1月31日水曜日

言い当てる言葉

初めて聞いたけど,その言葉どういう意味?

相手の知らない単語をどう説明しようかと困ることはないだろうか.
たとえば,異言語・異文化の友達と話すとき.
リスという単語をどう説明できるだろう?
無垢といった掴みどころのない概念は然ることながら,
平凡で当たり前な単語こそ,頭に言葉の準備がないものだ.
そんなときどうすればいいだろう?
そうした事態への心構えのために,
相手が知らない単語を説明する方法について紹介しよう.

ありがちな失敗は,
あれこれ言おうとして却って言葉に詰まることだ.
リスを「小さい動物で,大きい尻尾で,ヒマワリの種を食べる」と
直ぐに説明できればまだいい.
でも,誰にでも似た経験があるように,
シマリスやハムスターとの違いにも気を付けて...
何をどの順でどんな言葉で言うべきか...
といった具合に迷ってしまうこともありがちだ.

言葉に詰まってしまうのには,2つの理由が浮かぶ.
まず,言葉の厳密性にとらわれていること.
これは意識の問題だから,よくよく注意する必要がある.
そうして本稿の主題に関わるもう一つは,
辞書的な説明の仕方にとらわれていること.

辞書的な説明への固執は,
様々な説明の仕方を知っておけば回避しやすくなる.
言葉の説明とは言葉の定義に他ならない.
そこで以下本稿では,
言葉の定義には様々なやり方があることを紹介する.

言葉の説明=定義の仕方は,
「演繹的」と「帰納的」に大別できるだろう.
ここで,演繹的・帰納的とは法則体系をつくるときに使う言葉であり,
定義とはそぐわないと考える人もいるかもしれない.
だがそれは,数学や物理で使う狭義の定義だけを思い浮かべるからだ.
以下では,定義とはいい難いものも含めたが,
それらも含め様々な定義や説明の仕方があることを確認しよう.



以下,
「Highly Sensitive Person(HSP)」を説明する方法
を例として挙げてみよう.
注:以下の例はどれも正式なHSPの定義ではなく,あくまで説明例です.
 各説明の間には矛盾がある場合もあります.

(1)法則・規則・条件から具体例を思い浮かばせる(演繹的)
1.万人が共通に納得できる普遍的な特徴を述べる(内包的・概念的)
「生まれながらに高い感覚感受性、共感性、過度の興奮のしやすさ、深く考えようとする傾向を持つ人のこと」

 ※一部の重要な特徴を述べる(実質的・概念的)こともできる
 「並外れて敏感なため、感受性が豊かな一方、ストレスを生まれながらに感じやすい人」

2.発生過程や構成により特徴づける(発生的・構成的)
「神経が高ぶりやすい気質を持った親から生まれ、情緒不安定または子育てに無関心な親に育てられ、刺激に対して身体的・精神的に疲れやすい傾向を示すようになった状態にある人」

3.お決まりのものとして述べる(唯名的・規約的)
「ここでは、感覚が鋭すぎて生きづらさを感じている人をHSPと差し当たりよぶことにします」
「ある種の敏感な人はHSPと名付けられているのです」

4.測定できる特徴的な応答を述べる(操作的)
「自己診断項目のうち14項目にチャックがつけば差し当たりHSPとみなします」
「感覚的な刺激に対してストレスホルモンの分泌量が、平均より上昇しやすく平常化しにくい統計的に有意な傾向を示す人をHSPとみなします」

5.反対の概念を示す(反対語)
「感覚的刺激を何とも感じない人の反対概念です」



(2)特殊な事例から抽象的概念を浮き彫りにする(帰納的)
1.例を示す(外延的)
「神経学的過敏性の人や、心理社会的過敏性の人や、病理的過敏性の人」
「音に過敏な人、光や色に過敏な人、・・・」
「夏目漱石とか、ダリとか、・・・」

2.それを想起させる他の語句を示す(類語・同義語・アイコン)
「内向的な人、繊細な人というか」
「ほら、あのアーロンの...!」

3.矛盾なく説明できる仮説を想起させる特徴を示す(アブダクション)
「歴史上の偉大な発見や芸術の多くは、HSPが生み出してきましたといっても過言ではないでしょう」
「HSPがいれば、小さな変化を察知でき、人類は危機を回避できるでしょう」

4.消去法
「鈍感な人やHigh Sensation Seeking(HSS)型の人ではない人のことです」

5.相対的な位置づけを示す(対位的・対義語)
「アーロンが見出した中で最も主要な概念です」
「High Sensation Seeking(HSS)と対になる概念です」
「よくHSSとともに語られています」

6.個人的な確信を述べ、相手の経験との擦り合わせを狙う(内省的)
「ある人はHSPを何でも気にしすぎて疲れてしまう人だと言い、またある人は芸術的な才能を持った人と言っています」



様々な定義の方法があることを意図で,
必ずしもうまくない例もあることを断っておく.



伝わりやすさも求めるなら,
(1)と(2)を組み合わせて手短に示すと効果的だ.
つまり,大きな枠組みを与えた上で,具体例を示すとわかりやすい.
たとえば,こんな具合である:

「HSPとは感覚的刺激に敏感すぎて、生きづらさを感じてしまうという側面がある一方で、先駆的な発見や高い芸術性につながりうる鋭い感性を持つ人のことです.
 たとえば,カフカもHSPだったと言われています.彼は絶望的なほどの感覚の鋭敏さに苦悩していましたが,その感受性を文学に向け優れた作品を多く残しました.
 このようなHSPの概念は精神分析学者エレイン・アーロンが1996年に提唱しました.」



もっとも,誰でも最初に思いつくように,
非言語的に説明しようとする方法もある.
身体や事物を使って表現する方法だ.
たとえば,
 ※身体や事物を使って表現する(非言語的)
 ・現物・イラストを見せる(指示的)
 ・手などで特徴的な形を示す(暗示的)
 ・モノマネ・声帯模写をする(暗示的)
 ・それを想起させるアイコニックな動作をする(暗示的)
  (「お化け」⇒怯える動作,ドロンと言うなど)
  など

また,以下のような無意味な説明の仕方も考えられる.
これらは説明の切っ掛けづくりとしても不十分である.
これらを自覚的に知っておくことも,
説得力のある説明をする上で役立つこともあるだろう.

・曖昧・大雑把
「HSPとは一部の人間のことです」

・循環的・再帰的・トートロジー
「HSPとは高度な感受性のある人です」
「HSPとはアーロンが初めて明示的に使ったHSPを指す語句です」

・情緒的
「ああ、HSP、それは人類にとってのカナリヤだ」

・説得的すぎる
「HSPとは先鋭的な感覚を宿した人財です」

・婉曲的すぎる(関連語・縁語・枕詞・序詞・掛詞・駄洒落)
「瓶・缶」


以上

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